ご挨拶


中部森林開発研究会会長
梅村 正裕
蒲骭ョ 代表取締役

 
明治時代、江戸時代、さかのぼってみると、かつての日本は環境循環型社会でした。人は、山と川と森とともに生きてきました。しかし、時は流れ、高度な文明社会となり、多くの自然が失われてしまいました。最近は森林伐採等の公共工事等に対して環境保護団体から「自然保護」が声高に叫ばれるようになりましたが、本当に自然をただ放置することが最善の手段なのでしょうか?このような思いから私は森林の開発と保全の両立を目指し調査研究する中部森林開発研究会を設立致しました。

 今でこそ環境に配慮して、自然を保全していこうという考えが浸透してきましたが、今から20年前の1983年に森林事業の発展を願う会社が集まって中部森林開発研究会を発足しました。会員相互が密接な連携を図り、森林事業の発展に尽くすと共に、会員の健全な経営と技術の向上を図ることなどを目的としています。その思想は単に森林を守ろうというものではなく、自然との共存共栄を保ちながら森林保全につなげようという考え方を基にしています。

「ほったらかしで緑があるから、それが森林保全かというと、私はそうは思いません」

 森林に人が入って森を管理することが環境保全につながると私は考えます。昔は肥料が必要になったら森林に腐葉土を取りに行き、薪がほしい時は山に芝刈りに行きました。まったく山をほったらかしにしていたわけではありません。森林という財産を有効活用することで、自然との共存共栄を図っていたのです。日本の国土を守って将来、次の世代にバトンタッチしていくには、日本の森林の管理・保全を通じて環境を守っていく必要があるとお思います。

 私がこのような考え方に行き着くきっかけは、今から30年前のオイルショックの頃でした。当時牛舎で糞尿の処理に使うおがくずが不足していました。そこで私は、細すぎて使い物にならなくなった木をおがくずにすることで、有効活用することを思い付きました。役立たずの低質材に付加価値を付けることで、山林の林業の担い手に収入を与えることが出来ます。そのままほ放っておいたらごみになるものを活用することで、山も人も活力をつけるのです。
「樹木廃棄物や低質材を資源に替える」この考え方が今の中部森林開発研究会の礎となりました。

 中部森林開発研究会は、全国に先駆け1990年代にウッドチップリサイクルシステムを始めました。ウッドチップリサイクルシステムとは、焼却処理していた根株や枝葉などの不要材を破砕して有効活用し、100%再利用する方法です。廃材を貴重な資源として有効利用し、作業のコストダウンを図ることも出来ます。その種類は多岐にわたり、法面補強材としての使用、ウッドチップを利用した色鮮やかなチップロード、竹ソダや竹チップを使った濁水浄化システムなどがあります。また、ウッドチップを選別した際に排出されるウッドダスト(木粉)は、発酵剤を混入し土壌改良材にします。改良材の製造は全て木を伐採した現場で行う、「現場で発生したものは、現場で資源にする」という思想です。このように同会は貴重な森林資源を余すことなく100%有効利用しています。

 環境問題は子供から教えなければと、ビオトープをわかりやすく漫画で説明する小冊子を1万5千部作成し、地元の小学生に配布しました。また、小学校の中にビオトープを作る事業に参加するなどして、子供たちが動植物について考えてもらえるように尽力しています。
 また、空き缶拾いのボランティアに参加すれば、自ら空き缶を捨てることはなくなるし、道端に捨てられた空き缶を見て、環境に対する意識を高めることにつながります。
 「廃棄物を資源として考えるべきじゃないか。そのためには自分たちの地域にあった活用の方法があるはずじゃないか?1人でできなかったら2人、3人と仲間を増やし、足下、自分の地域から勧めていくべきだ」
 環境問題はまず足下からです。一歩一歩着実に歩み続けることで、小さな流れはやがて大流となり、周囲を巻き込んでいく。地道な活動の積み重ねが、やがては大きな花となり、実を結んでいくのです。

 私が多くの影響を受けたのが「矢作川沿岸水質保全対策協議会」(以下矢水協)の事務局長だった内藤連三氏です。内藤氏は残念ながら一昨年8月に他界されたが、その志は心の中に今も生きています。
 矢作川は長野県南部を水源とし、愛知県中央部を流れ、三河湾に流れ込む中河川です。矢水協は、矢作川に流れ込む土砂や工場排水から矢作川を守るために立ち上がった組織です。「流域は一つ運命共同体」を合言葉に対立していた上流と下流の相互理解を深めるための交流を促進し、昼夜を問わず工場廃水を垂れ流す工場の調査パトロールを行うなど地道な活動を行いました。そして、ついに愛知県では大規模開発の許可条件に「矢水協の同意」を必要とすることになりました。
 中部森林開発研究会は矢水協の支援組織でもあり、矢水協の思想が息づいています。同会が行っている濁水浄化システムは、工事現場の不要材である竹を使って竹チップや竹ソダに加工し、低コストで濁水を清流に浄化しています。
 建設業者が、環境に対する「気配り、心配り」をし、情報開示を徹底することで地域住民との合意形成を行い、お互いに理解を深めていく。中部森林開発研究会と矢水協の地域住民に対する取組みは、建設業者としての本来あるべき姿を提示しています。

         2003年 中部森林開発研究会 会長 梅村正裕

※矢水協とは
1966年、泥水や工場排水、生活排水から矢作川の水を守るために農業団体や漁業団体、市や町が設立した。「秩序ある開発」を目指し、「濁水を出さない工事」を実施するために独自の土砂流出防止対策を編み出した。開発前に環境アセスメントを実施し、川の濁り(濁度)を指標とした水質監視を行うなど、これら矢作川における水質保全の活動全体は「矢作川方式」と呼ばれ、民間主導の流域管理の方法として定着している。


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